三蔵法師が求めた不老不死の妙薬「杏仁子」。
開花の遅いヤマザクラでさえも花が散った頃に開花する異色の桜。
コップを洗う細長いブラシのような白花を咲かせるウワミズザクラ(上溝桜)はとても桜の仲間とは想像できません。
名前の由来は、はるか昔はシカの肩甲骨の裏に溝を彫り、この樹皮で焼き、溝の周辺に生じる割れ目を見て吉凶を占ったという説から。
この裏溝が転じて「上溝桜(ウワミゾザクラ)」と書かれ、それが転訛してウワミズザクラと呼ぶようになったようです。古名は、古事記の「天の岩戸」に出てくる波波迦(ははか)。

ツボミや未成熟果を塩漬けにしたものを、杏仁子(あんにんご)と呼び、焼き物の前付けや酒の肴に。黒く熟した実はそのままでも美味しく、漬けた果実酒は、杏仁香酒と呼ばれ健康ドリンクとして利用されています。杏仁香（杏仁子）は不老不死の妙薬とされ、三蔵法師は仏教の経典と共にこれを求めて旅に出たという説もあるほど。
塩漬けにした桜餅特有の香りの正体は、「クマリン」という香成分の一種。やはり「杏仁子の塩漬け」は、クマリンの香りが漂います。さらにウワミズザクラの樹皮を傷つけると、そのクマリンの香りがするそうです。花の形は似ても似つかないですが、葉の形と臭いは確かに桜です。
新鮮な葉、花穂いずれも鎮咳去痰作用があり、一部の地域では樹皮を茶の代用に、ヨーロッパでは果実をジンやウイスキーに入れて味を付けることがあるようです。

近似種のイヌザクラのツボミも同様に食べる事ができます。

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